「お金が欲しい」という意味

atsuhirolaw2006-01-04

 「何が欲しいですか,夢は」と聞かれて「お金が欲しい」と答える人がいる。また,口に出して言わなくても人は皆そう思っているであろう。その意味は「安定な生活を求める」などいろいろあるけれども,当該答え経済的に考察してみると,他者との相関関係(希少性)を考慮しなければ真の意味は明らかにならない。
 仮に夢が叶いお金が得られたとしても,他の人も大金持ちになったら,みんなが欲しいものを手に入れることはできないのである。すなわちバブル期の日本のように,大金を手にすれば,みな働く気が失せ,豪邸や高価な車,バカンスなどに資金を費やそうとするだろう。もちろん,最初のうちは売り手も大満足。だが,次第にみんな焦り始める。商品の仕入れが次第に難しくなっていく。だいたい働いている人が減ってしまうので,工場から注文どおりの在庫を取り寄せることが不可能になる。在庫はまもなく底を尽き,店先から商品がなくなってしまうだろう。
 すべての人が所得を大幅に増やせたとしても「希少性」という経済問題は未だ解消されないのだ。むしろ経済活動全体が停止し,お金が無価値になってしまうなど悪影響のほうが大きいともいえる。
 資源には限りがあり,人間の欲求は無限である。これら二つがぶつかり合うからこそ,希少性が生まれ,選択が必要となり,限られた資源の使い道が決定される。したがって,「希少性」という問題の原因は「資金不足」ではなく,人々が欲するものを作るための「資源不足」に由来するものであるから,前述の答は「自分だけ」という言葉を付け加えなければ正しいことにはならないのだ。