「無罪の心証」と元裁判官

 テレビなどで報道されているが,静岡県で昭和41年,みそ会社専務一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で,袴田巌死刑囚(71)(再審請求中)に対する1審・静岡地裁の死刑判決にかかわった元裁判官(69)が9日,東京都内で開かれた支援団体の集会に参加し,「自分は無罪の心証だったが,裁判長ともう1人の裁判官を説得できず,2対1の多数決で死刑判決を出してしまった」と明かしたのである。
 裁判官が,判決に至るまでの議論の内容など評議の中身を明かすのは裁判所法に違反するが,元裁判官は「高裁や最高裁が間違いに気づいてくれることを願っていたが,かなわなかった。人の命を救うための緊急避難的な措置」と主張している。余程の事情があったのだろう。
 
 この報道を聞いてはっきり言って驚いたが,有罪の心象に傾きがちな傾向に警笛を鳴らす意味で,今やっている刑事裁判に少しでも役に立てばと思う。
 完全否認事件でも,起訴されると「有罪を覚悟する」と接見で被告人が述べていたように,原則(無罪推定)と例外が逆転している雰囲気を打破するためにも。
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