執行猶予の必要的取消

 執行猶予中(懲役1年6月・猶予3年)に罪を犯して裁判があり,今度は実刑判決(懲役3年)を受けてしまった場合でも,その時点で直ちに執行猶予が取消されてしまい3年と1年6月を併せて合計4年半服役しなければならないというわけではない。


 執行猶予の取消については刑法の26条(必要的取消)による「猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮刑以上の刑に処せられ,その刑について執行猶予の言渡しがないとき(26条1項)。」と示されているが,ここでいう「刑に処せられ」とはその刑についての判決が確定することが必要と解されている(最判昭54年)。


 この最高裁判例によれば,1,第1審判決言い渡しまで長びいたり,2,判決を言い渡されても控訴して判決が確定しなければ,その間に猶予期間を経過してしまえばもはや必要的取消はないことになる(長引かせることに対しては,量刑上別個の考慮がされることはありうるが)。
 前例で言えば控訴して高裁の判決が確定するまでに執行猶予期間が経過してしまえば,3年服役すればよいということになる。

 また,執行猶予の取消しは裁判官が職権で取消すことはできず(刑訴法349条),一般的には,判決確定後に検察官が裁判所に対して執行猶予の取消を請求することになる。

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