■構造計算書偽造問題 

atsuhirolaw2005-11-19


 千葉県市川市設計事務所が,マンション・ホテルなどの設計に必要な構造計算書を偽造していたという事実が昨日発覚し,大変驚いた。そもそも建築士耐震強度を確保して建物の安全を守る責任を負っており,しかも地震への不安が高まっているときに,コスト削減を願う施工主側の思惑もあったと思うが,当該建築士は虚偽データを作成し建築確認申請まで通ったという。当該構造計算では構造が弱く,震度6強以上の大地震でも倒壊しないはずのマンションが、震度5強で倒れる危険があるそうである。
 建物の構造欠陥は外見からは殆ど分からず,それを知りうる立場の専門家が設計段階から意図的にごまかしていたとは,専門家としての責任感とプライドの欠如も甚だしい。
 さらに,柱が細かったり,鉄筋の量が少ないのに偽造を見破れなかった官から委譲された民間の確認検査機関や施工業者の言い分も極めておかしい。こんなのでいいかと,すぐわかるはずである。組織がらみの可能性もある。
 個人情報保護を理由として多くのマンション名が明らかにされていないが,転居や売買などが混乱しないように公表すべきであろう。そうしないと購入者は疑心暗鬼になって中古マンションの市場価格は大幅に下落するであろう(阪神大震災の時のように。)。
 このことは氷山の一角であるかもしれない。たった一つの小さな自宅兼設計事務所だけが不正を働いていたとも考えにくいからである。マンションの管理組合を中心として全戸を対象に構造計算書や建物の再点検をしたほうがいいだろう。また,これから設計会社や検査機関及び施工業者に対しては莫大な額の損害賠償請求もなされるであろう。

関連記事 
     強度偽装マンション2棟は自壊の恐れも
     経済設計そのカラクリ複数計算書の組み合わせ
     耐震偽造90棟!あの建築士5年間の手掛けた物件
     http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20051120