認知訴訟

atsuhirolaw2005-12-27

1 非嫡出子と父親との間に法的親子関係が生ずるには,血縁プラスαが必要であり,それが認知である。通常は任意認知により行われるが,それがなされない場合には訴訟という手段を用いて強制的に父子関係を確定する強制認知という制度がある。
 (強制)認知訴訟において父子関係の証明が大きな問題であるが,最近はDNA鑑定(100パーセントではないが精度は高い,20〜30万円かかる)を実施し,その結果に応じ必要な限度で証拠調べをする運用が多い。
 この場合,被告父が採血を拒否すると,強制する手段がないが,この場合原告子に不利な認定をすることは相当ではない(東京高判昭和57年6月30日ー同種の事案で,科学的裏付けなしに親子関係が存在することを推認することが不相当であるということはできない,としている。)。
2 さてDNA鑑定をめぐる興味深い事例として以下のものがある。長年父と慕われていたXがその子Yに対し,母親Aとの離婚騒動に際し提起した親子関係不存在確認訴訟ーAはXとの交際中他の男性とも交際があったーにおいてDNA鑑定を実施したところ,父子関係なしとの結論が出た事案がある。この点一審の大分地裁(H9,11,12)では,Xは父の地位を拒むことが出来ないとしたが,福岡高裁(H10,5,14)はXY間に親子関係が存在しないことは明らかである(事実主義)とした。
 この点については,DNA鑑定ばかりではなく,継続した事実としての父子関係をも重視して慎重に決せられるべきであり,場合によっては鑑定に反する認定も許されて良いであろう(真実とは,燃えている石炭のようなもので,この上ない慎重さがなければ扱えないものなのである)。