宮崎被告の死刑確定へ(最高裁が上告棄却)

atsuhirolaw2006-01-18

  東京都と埼玉県で17年前の1988―89年,幼い女の子4人が相次いで連れ去られ殺された幼女連続誘拐殺人事件で誘拐,殺人,死体損壊など六つの罪に問われた元印刷業手伝い宮崎勤被告(43)の上告審判決で,最高裁第三小法廷は17日,1,2審の死刑判決を支持し,被告の上告を棄却した(死刑が確定する。)。
 裁判では事実関係に大きな争いがなく,責任能力の有無という争点に終始した。1審東京地裁では2度にわたる精神鑑定を実施。「人格障害」と完全責任能力を認める1次鑑定と「統合失調症」「解離性同一性障害(多重人格)」として責任能力を一部否定する2次鑑定の計3通りの鑑定書が提出されたのである。
 判決理由藤田宙靖裁判長は,最大の争点だった,善悪を判断して行動する能力(刑事責任能力)の有無について「極端な性格的偏り(人格障害)で精神障害ではない」として完全責任能力を認めた(1,2審の判断支持)。その上で「自己の性的欲求を満たすため、女児4人を殺害するなど非道な動機に基づく冷酷残忍な犯行で,動機に酌量の余地はない」と死刑の理由を述べた。
 弁護側としては統合失調症との見解を示し「互いに無関心な家族の中で,支えだった祖父の死を機に動機が噴出した」と心神耗弱を主張していた。死刑事件弁護の基本姿勢としては是認されるであろう。
 なお,法律上の論点を争う最高裁では被告は出廷しないため(法律審),この日の法廷に宮崎被告の姿はなく,また弁護側は10日以内に判決の訂正申し立て(刑訴法415条)ができるが,実質的な争点に対する判断が変更された例はない。