■2005/11/13 (日) 司法書士の簡裁代理権

 周知のとおり司法書士が100時間に及ぶ特別研修を経て考査という国家試験に合格すると,簡裁代理権を付与される制度が新設されている。
 この簡裁代理は,従来裁判所に対しては書類作成しかできなかった司法書士にとって,簡易裁判所という限定はあるが,依頼者を代理して和解ができたり,法廷に立てるという意味で画期的なものである。この点で司法書士は,まさに「町の法律家」とよぶにふさわしいものになったといえるだろう。司法書士の職域拡大についての日本司法書士会連合会や各地司法書士会の努力(自分は司法書士中央研修に参加したことがあるので,書士会幹部の研修等へのご努力はよく理解している。)には敬意を表したいところである。
 反面,裁判所の方は,簡裁代理についてどのような認識をしているかというと,特別研修における裁判所側の声を伝え聞いていると,簡裁における本人訴訟(裁判官や書記官の手を大変煩わしている)を安い価格で支援してほしいというところが本音であるようである。司法書士に,簡易裁判所の事務処理促進に手を貸してほしいというのである。
 また現実的には,簡易裁判所の訴額は140万円以下であり,手間ひまかけて訴状や準備書面を作成したり,証人尋問や当事者尋問をしたりしても,たいした報酬にはならず,利益なき繁忙という側面もないではない。
 以上のように,書士会側と裁判所側での認識のずれや報酬の問題はあるが,司法書士の研修の充実等を考慮すると,簡裁代理権が国民の司法的救済に役立つことはどうやら間違いないもののようである。