離婚事件の強力武器の扱い方(48)

atsuhirolaw2006-01-07

 離婚事件における男女に共通する強力武器は「不倫」である。なぜ,「不倫」が最終兵器かと言うと,(A)離婚したい側にとっては、当然に強力な離婚理由になり(民法770条1項1号),(B)離婚したくない側にとっては,相手が「有責配偶者」となれば,なかなか離婚は認められないからである。
 ただ,相手の不倫の「取り扱い」を誤まると,せっかくの強力武器も「不発」に終わってしまう。結婚生活が長ければ,過去にお互い「浮気」くらいはあっても決しておかしくはないが,「過去の浮気」の取り扱い次第では,相手を撃破することもできれば,不発に終わってしまうことがある。
 なぜなら「相手の過去の浮気」を知っていて,水に流してその後平和な生活をしていた場合には,現行民法には規定はないが,旧法の趣旨などを斟酌し,離婚請求棄却の有力な1資料となるからである(不貞行為の宥恕)。
 のみならず,「過去の浮気」を許された相手方は,「有責配偶者」でなくなりしっかり自分の方からの離婚請求が認められてしまう。
 かように「浮気を許す」ということは,せっかくつかんだ相手の尻尾を,櫛でとかして離してやるようなものである。
 
 たとえば,まだ夫や妻が退職してないし,年金分割の2007年も来ていない。退職金では不利,年金は分割なしになってしまうかもというケースではどうするか。もっとも,この場合忍の一字で,あと数年粘ればなんとかなる状況である。
 しかし「過去の浮気」はどうするか。また,平和に過ごしたその後の期間はどうするかという問題が発生する。
 こういう場合は,背に腹は変えられないので,知らなかったことにするほかない。
 しっかり証拠をつかんでいれば,それは,後で見つけたことにして,「あの時謝ったじゃないか」と言われようが,なんと言われようが,「単にお付き合いをしていただけだと思っていたのに,よもや,深い関係だったとは・・・・知らなかったんだ!そうだと知ってたら,許したりはしなかった!」で通すしかない。「こっちが知っていたかどうか」という主観的要件は,相手方としては,立証は困難なので・・・・。
 なぜ,「不可能」ではなく「困難」なのかというと,中には,念書なんぞに,はっきり書いている場合があるからである。心当たりの方もいるのでは。もしこの場合,調停調書等に「許す」とか記載されていたら,完全にアウトである。ただ,2人だけで作った「念書」なら,なくしてしまう可能性!だってあるのである。